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2話 桃色のひざ枕と、甘い人払いの理由

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2026-01-27 04:07:35

「う、うん……フィーは、一緒に来たいんだね~。野営ができて、両親の許可を得たら考えようか」

 苦肉の策でそう答える。あれほど溺愛されて育てられた彼女だ。ご両親が「はいそうですか」と首を縦に振るはずがない……という確信に近い期待があった。万が一、放任主義で「行ってきなさい」なんて言われたら、それこそ恐ろしい事態になるけれど。

 すると、フィーは何かを思い出したようにハッとして、背後に控えていたお付きのメイドと護衛たちを振り返った。

「あ……そうですわ。あなた達はこちらで待機していてください」

 凛とした声で指示を出すと、彼女は俺の方を向き直し、今度は林檎のように頬を赤く染めて視線を彷徨わせた。

「お茶にしましょ?」

 ……お茶に誘うだけで、どうしてそんなに恥ずかしそうにするんだろう。久しぶりに二人きりになって、積もる話でもしたいということだろうか。背後ではリリスとルフィアが「二人きり?」と耳をそばだてているのが気配でわかる。

 窓から差し込む午後の光が、書庫の埃をキラキラと輝かせている。フィーの熱を帯びた視線に、俺は少しだけ落ち着かない気分になりながらも、差し出されたその穏やかな提案を拒むことはできなかった。

♢秘めやかな談話室と、柔らかな沈黙

 談話室へ移動すると、控えていたメイドたちが鮮やかな手並みで準備を始めた。空間魔法を用いて取り出された最高級の茶器に、湯気と共に立ち昇る芳醇な茶葉の香り。彩り豊かなお菓子が並べられ、あっという間に贅沢な茶席が整えられた。

「下がっていいわ。大事なお話をしますので……」

 フィーが凛とした声でメイドたちに指示を出す。扉が静かに閉められ、室内には俺と彼女の二人きりの静寂が訪れた。大事な話? 彼女の顔を見ると、その表情は硬く、今にも心臓の音が漏れ聞こえてきそうなほど緊張している。……なんだろう。改まってそんな顔をされると、こっちまで胃のあたりがソワソワしてくるじゃないか。

 すると、フィーはおもむろに立ち上がり、対面ではなく俺のすぐ隣へと腰を下ろした。

「ど、どうぞ……」

 消え入りそうな声と共に、彼女は少しだけ顔を傾け、俺の方へと頬を寄せてきた。潤んだ瞳が上目遣いに俺を捉え、微かに震える唇が期待と不安を物語っている。その仕草の意味をようやく理解した瞬間、俺の緊張はふっと温かな苦笑いへと変わった。

「ビックリしたぁ……。大事な話とか言うからさぁ」

 何事かと思ったよ、と心の中で呟きながら、俺はスッと手を伸ばした。指先が彼女の頬に触れる。さすがは一国の王女様と言うべきか。吸い付くようにしっとりとして、まるで極上の絹のようなすべすべとした触り心地だ。指を滑らせれば、どこまでも柔らかく、彼女の体温が指の腹を通じて俺の心まで伝わってくる。

「……ふふ、本当に気持ちいい肌だね、フィー」

 俺が優しく撫で続けると、フィーは安心したように瞳を閉じ、俺の手にそっと自分の顔を預けてきた。外での荒々しい討伐や、仲間たちとの賑やかな騒ぎもいいけれど、こうして誰にも邪魔されずに流れる甘い沈黙も、今の俺にはたまらなく心地よかった。

♢桃色のひざ枕と、甘い沈黙

「レイくんが、気に入ったとおっしゃられていたので……人払いをしましたの。人に見られたら困りますし」

 そう言って少しだけ得意げに微笑んだ瞬間、彼女は前のめりになりすぎてしまったのか、バランスを崩して俺の膝の上へと倒れ込んできた。

「うわ、わわぁっ! す、すみません……」

 フィーは真っ赤になって慌てて起き上がろうと身悶えしたが、俺にとっては願ってもない形だ。ちょうど目の前に、手入れの行き届いた彼女の柔らかな頬がある。俺は起き上がろうとする彼女を制するように、そのまま指先でむにゅむにゅと感触を楽しみ続けた。

「はぅ……膝枕ですわよね、これ。良いのかしら……良いわよね。レイくんですし……」

 何やら自分に言い聞かせるような謎の独り言を呟きながら、フィーは観念したように力を抜き、俺の膝にその小さな頭を預けた。

「それにしても、フィーの頬は本当にすべすべだね~」

 指を滑らせるたびに、吸い付くような肌の弾力が指の腹を押し返してくる。まるで高級な餅か、出来立ての淡雪を触っているような心地よさだ。あまりの気持ちよさに、ついつい何度も「むにゅむにゅ」と形を変えて触ってしまう。

 フィーはもう抗うこともせず、黙ってニコッと幸せそうな笑みを浮かべ、穏やかに目を閉じていた。これって、俺は最高に癒やされているけれど……フィーはどうなんだろう。自分から誘ってきたくらいだ、きっとこうして触れられている時間が、彼女にとっても同じくらい心地よいものに違いない。

 静かな談話室に、カチコチと時計の音だけが響く。お茶が冷めるのも忘れて、俺たちは陽だまりのような温かな沈黙の中に、いつまでも浸っていた。

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